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コンゴ・中部アフリカ特集Uは終了しました
 呪術用彫像ペンデ/コンゴ民主共和国 過去の特集を見る>>

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*本稿は2010年2月の「コンゴ特集」コラムに、加筆訂正・写真の入れ替え等したものです。
*文中の写真は全てベルギー王立中央アフリカ博物館収蔵品です

〜コンゴとは〜
 一口にコンゴといっても国名としてのコンゴ、または地理上の地名、歴史的地名としてのそれがある。国名として現在コンゴの名を使っているのはコンゴ共和国(コンゴ‐ビラザビル)コンゴ民主共和国(コンゴ‐キンシャサ・旧ザイール)の二ヶ国である。地名としてコンゴという場合は狭い意味でコンゴ盆地をさす場合と、さらに広く歴史的地名として中部アフリカ一帯をさす場合とがある。

 アフリカ大陸中央部に位置するコンゴ盆地はアフリカ一の流域面積(世界でも第二位)を誇る大河コンゴ河の流域とほぼ重なり約350万kuの面積を持つ。コンゴ盆地北部は広大な熱帯雨林に覆われその南部(コンゴ民主共和国南部からアンゴラ北部にかけて)には広々としたサバンナが広がっている。

 歴史的地名としてのコンゴはギニア湾最東部から大湖地方の間の中部アフリカ一帯をさす言葉であり、現国名としてはコンゴ共和国コンゴ民主共和国アンゴラカメルーンガボン中央アフリカ共和国赤道ギニアサントメプリンシペの全部、または一部が含まれる。

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〜コンゴの歴史〜
 コンゴ盆地の歴史をたどることは困難を極める。古くから文字社会との接触のあった歴史的スーダン、東アフリカ沿岸部と異なり、コンゴが文字社会と接したのは15C末のポルトガル人によるコンゴ王国来航以来のことであり、それ以前の文献資料はほとんど無い。また熱帯雨林地方では人類活動の遺構・遺物が残りにくく考古学的な歴史検証をも困難にしているうえに、考古学的調査そのものがそれほど密に行われていない。

 現在わかっている限りコンゴ盆地の最古の住人は現在ピグミーと総称されている人々の先祖であったと考えられている。古代エジプトの文献にもアフリカ奥地の熱帯雨林に住むきわめて身長の低い人々のことが記されており、彼らは広大なコンゴ盆地およびその周辺に広く居住し狩猟採集生活を営んでいたと思われる。

 紀元前後の時期に、現在コンゴ盆地を含む中部アフリカ・東アフリカ・南部アフリカ一帯に住民の大多数を占めるバントゥー系諸民族の祖先はその原住地(現在のカメルーンからナイジェリア東部と推定されている)からコンゴ盆地へと移住を開始、以後十数世紀にわたり拡大分裂を繰り返しながら、現在バントゥーアフリカとも呼ばれる地域へ拡散していった。

 コンゴ南部、密林の南に広がる広大なサバンナ地帯では14、15C頃からいくつもの王国が建国された。文字史料に残る最古のコンゴ地方の王国はコンゴという地名の由来ともなったコンゴ王国である。15C末にポルトガル人が来航した際、コンゴ河河口から現アンゴラ北部にかけての地域にすでに強大なコンゴ王国が、その北方には同系統の王国ロアンゴが成立していたという。

 他方コンゴ盆地サバンナ地帯の内陸部にもわかっている限り15、6C頃からいくつもの王国が勃興しはじめた。クバ王国、現カタンガ州を中心として栄えたルバ王国、ルバと同系統のルンダ王国、ルバ‐ルンダ王国(帝国と呼ばれる場合もある)の影響下に建国された一連の小王国ルタラバ、カゼンベ、ビサ、ベンバチョクウェなどである。これらの王国群が誕生した背景にはインド洋沿岸部との長距離交易による富の蓄積があり、中でも帝国と呼んでも差し支えない規模にまで発展したルバ‐ルンダ王国はコンゴ盆地南部一帯に広大な政治的・文化的影響力をもっていたと考えられている。


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 15C末にコンゴ地方の大西洋岸に来航したヨーロッパ勢力(初期にはポルトガル人)は当初沿岸部(コンゴ王国など)とのみ交易を行っていたが、コンゴ王国を喰らい尽くしたヨーロッパ人たちはやがて内陸奥地にまで交易の手を伸ばすこととなる。内陸の王国群はヨーロッパ人との交易(鉱産資源・象牙・奴隷などを輸出しヨーロッパから火器・奢侈品などを輸入した)でさらに富を蓄え繁栄した。皮肉なことに交易の拡大は大西洋岸からのヨーロッパ勢力の侵入、インド洋沿岸部からのイスラム系交易商人勢力の侵入(コンゴ盆地東部の広い範囲を勢力下に置いた奴隷商人ティップ=ティプなど)を容易にし、奴隷狩りの増大による国力の低下とあいまって19C末〜20C初頭にはコンゴ全域がヨーロッパ各国の植民地支配下に置かれることになった。

 第二次大戦後、半世紀以上の植民地支配を経てコンゴ・中部アフリカ各国は独立を達成するが(ポルトガル領となっていたアンゴラサントメプリンシペ:1975年、赤道ギニア1968年、以外の国は「アフリカの年」1960年に独立)、独立後も凄惨な内戦や独裁が続いた国が多い。代表的なものだけ挙げてもコンゴ民主共和国=旧ザイール(コンゴ動乱1960〜1963年、周辺諸国も介入しアフリカ大戦とまで呼ばれたコンゴ内戦1996〜2003:2003年に停戦合意が成立したものの依然東部地域で多数の反政府武装勢力が活動中。現在も内戦状態が続いているとの見方もある)、アンゴラ内戦(1975〜2002年)、中央アフリカ共和国(ボカサの暴政1966〜1979年、現在も地方には政府の力が及ばず、反政府武装勢力、武装強盗団などが跋扈している)、赤道ギニア(マシアスの独裁1968〜1979年、国民の1/3が難民となって国外脱出する異常事態を招いた)、などがあり、アフリカ大陸でもっとも不安定な地域のひとつとなっている。

 他方鉱産資源などに恵まれている国が多いだけに(それがまた内戦の原因になっているのだが)、国が安定さえすればガボン、アンゴラなどのような発展も見込める。また、現在まで残る伝統王国、アフリカ美術の宝庫といわれるほどの豊かな工芸文化、広大な熱帯雨林の奥に受け継がれた伝統文化、ゴリラチンパンジーオカピゾウ等に代表される野生動物など、潜在的な観光資源も豊富な地域であり、アフリカ好きの一バックパッカーとしても、中部アフリカを安全に旅することできる日が一日でも早く来るのを願ってやまない。

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〜コンゴの工芸・文化〜
 コンゴ一帯(コンゴ盆地およびその周辺各国:アンゴラカメルーンガボン中央アフリカ共和国など)はアフリカ美術の宝庫とも言われ、アフリカを代表する彫刻の名手と評価される民族が数多く居住している。広大なコンゴ地方に暮らす何百とも言われる民族の彫刻の特徴を一口で説明することは到底不可能であるが、いくつかの最大公約数的な共通点を挙げることはできる(あくまで比較的多く見られる共通的な特徴というだけで、例外はいくらでも存在する)。スーダン地方の木彫が直線的で抽象的な造形、堅牢な印象を与える作品が多いのに対し、コンゴ地方の彫刻は曲線を多用した比較的写実的な作品が多く見られる。

 コンゴという範囲からはややはみ出すがザンビア北西部からコンゴガボンを通りカメルーン‐ナイジェリア国境地帯に至る地域には「ハート型の顔」とよばれる眉毛の線を境に眼窩から頬の部分をハート型にへこました様式の仮面なり彫像なりを作る民族が多く居住しコンゴ地方の彫刻の特徴のひとつとなっている。

 またコンゴ地方はアフリカの中でも特に呪術信仰の盛んな地域のひとつであり、呪術(この場合の呪術とは敵を呪うというような他人に害を及ぼすような目的だけでなく、病気治癒、家内安全、子孫繁栄、失せもの探しなどの目的のものも含む)に用いるための彫像なども盛んに作られ、その中でもっとも有名、かつ印象的なのは全身に釘や鉄片を打ちつけた「釘の偶像」と呼ばれる彫像であろう(→Nkisi)。

 呪術像などは主に民間の需要で製作・使用されたのに対し、王制の発達した社会では民間の彫刻とは別に宮廷美術というべき高度な工芸が発展した。その代表的な例がクバ王国(歴代国王の像など)やルバ王国懸崖の髪の名工ブリの名工など)であり、両民族の彫刻はアフリカ彫刻の中でも最高峰に位置づけられている。

 木彫以外に眼を向けると、コンゴ盆地の広い地域で作られているラフィア布(特にクバのものが有名)、象牙彫刻、木で彫った像に金属の板をかぶせた納骨箱(コタ)などがコンゴ地方の工芸品として知られている。

 ルバクババコンゴヨンベヴィリコタクウェレチョクウェソングウェテケヤカファンアザンデマングベトゥバンボレベナ=ルルアなどアフリカ美術の本を開けば必ず眼にすることができる芸術民族が綺羅星のごとく並ぶコンゴ地方は、まさにアフリカ美術の宝庫の名に恥じない輝きを放っている。


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コンゴ特集Uは2022年8月末日をもって終了しました
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