ヴードゥーのフェティッシュ |
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ヴードゥー教とは?
ヴードゥー教という言葉をご存知だろうか?カリブ海を舞台にした映画や小説で「強力な呪術を操る黒人の秘密宗教」のような形で取り上げられることも多いのでこの言葉自体を耳にした事のある人は多いはずだ。しかし、このヴードゥー教というものがどのようなものなのかを正確に知っている人は少ない。ヴードゥー教とはカリブに連れてこられたアフリカ人奴隷たちによって作り上げれた信仰であり、彼らの故郷である西アフリカ沿岸部の宗教がもととなっている。
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アフリカン・ヴードゥー
ヴードゥー教特集と銘打っておいてこんなことを言うのもなんだが、正確に言えばアフリカにはヴードゥー教と呼ばれる宗教は無い。西アフリカ沿岸部ベナンに住むフォン民族の言語で神を意味する「Vodun/ヴォードゥン」という言葉がハイチで「Voodoo/ヴードゥー」と転訛し、そちらのハイチ・ヴードゥーのほうが有名になったため、本家アフリカの「ヴォードン信仰」もヴードゥー教と呼ばれるようになった。当サイトでは便宜上特に断りなくヴードゥーといった場合は西アフリカのそれを指す。
ヴォードン信仰(アフリカン・ヴードゥー)とは西アフリカ沿岸部のフォン民族(ベナン)やヨルバ民族(ナイジェリア)を初めとする東ギニアの民族(トーゴのミナ・カブイェ、トーゴ・ガーナのエウェなど)の間で広く信仰されている宗教であり、同地域に多数の信者 ベナン:死の神エグンに扮した踊り手
を持つ。便宜的にヴードゥー(ブードゥー)教と総称し
ているが統一的な教団があるわけではなく、民族・地域ごとに多くの差異がある。
ヴードゥー教は多数の神々(Vodun)からなる万神殿(パンテオン)を持つ多神教であり、複雑かつ多彩な神話体系を持つ。至高神としてマウ・リサという神がが存在するものの、信者の信仰の対象は日常の事柄にかかわる神々に集中していて、それぞれの事柄(生死、病気、豊作、雨乞い、商売繁盛などなど・・・)を司る様々な神が信仰されている。神々への祭礼として、生贄(鶏、羊など)や激しいダンス、トランスを伴う多様な儀式や呪術を行うことで知られていて、主要な神々はそれぞれの信者や結社を持っていることもある(ヨルバの信仰においては歴史上の王と特定の神が結び付けて考えられることが多い)。
ヴォードゥン信仰における主な神々
マウ・リサ: |
ヴードゥー教ーの至高神。ナナ=ブルクと呼ばれる原初の神から生まれ世界を創造した。マウという女性神とリサという男性神の双子の神であるといわれている。また一説には両性具有であるとも言われている。いずれにせよ創造神として男女両性の特徴を備えているものと考えられる。マウ=リサは至高神であり、ヴードゥーの神々はマウ=リサの子供、孫、子孫である。これらの神々はそれぞれの一つ、またはいくつかの事柄を司り複雑な神話体系を構成している。マウ=リサはヴードゥーの主神といっていい神格ではあるものの、人々の信仰の対象は日常の事柄にかかわる神々に集中していて、マウ=リサ自身が祭祀の対象になることはあまりない。
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レグバ: |
ヴードゥー教の神々の中で最もひろく知られている神の一人。ナイジェリアではエシュと呼ばれる。ヴードゥーの至高神マウ=リサの末子。太陽神としての性格も併せ持っているが、トリックスターとしてよく知られるこの神は、十字路、道、扉、など人界と異界の境と考えられている場所を司り、両方の世界を行き来することから、神と人間の仲介者、通訳としての役割を担っている。カリビアンヴードゥーの儀式ではまず最初にレグバの名を唱え、他の神々との仲介を依頼する。
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シャンゴ: |
シャンゴは雷・嵐の神、万物の誕生を司る神であり、ヴードゥー教の神々の中で最も多くの信者を持つ神の一人である。ヨルバ社会においてはシャンゴは生前オヨの王であったとされ、恨みをのんで死んだといわれている。人々はシャンゴの祟りを恐れ、シャンゴの霊を慰めるために彼を神として祭った。双頭の斧はシャンゴのシンボルであり、シャンゴ像やシャンゴの社、シャンゴに関する儀式用品などにそのモチーフが用いられている。
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オグン: |
ヴードゥー教の神々の一人。鉄と火の神、狩人と鍛冶師の守護者、戦争の神として崇められ、ヴードゥーの神々の中で最も広く信仰を集めている神の一人である。ヨルバの神話によればオグンは最初に地上につかわされた神であり、その役目は人々の住める場所を探す(もしくはつくる)ことであったという。フォンの神話ではグーと呼ばれている。
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エグン: |
死神 |
オシュン: |
水神 |
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他にも地域限定の神々などがいて正確な数はわからないが数百の神がいるともいわれ、しばしば道端などでも小さな呪物を置いた小さな社(中には本当に小さなものも有り、おいてあるご神体もそう言われて見なければその辺のゴロタ石にしか見えないこともある)を見かけることができる。
ベナンにおいては独立後の一時期、近代化政策によりヴードゥーへの圧迫が強くなったが90年の民主化を機に、ヴードゥーを前近代の遺物ではなく伝統文化として再評価するようになった。現在ではヴードゥー大祭の日1月10日は国民の祝日とされている。
ギニア湾沿岸地域はキリスト教の影響が強くキリスト教徒が多数派であり、また最近ではイスラム教徒も増加してきているが、彼らもまた部分的にせよヴードゥーを信仰していることも多い。ベナンのヴードゥー博物館のおじさん曰く「オレはムスリムだけど、ヴードゥーの儀式に参加するよ。キリスト教徒だろうとムスリムだろうと俺達(フォン人)はここの(、と胸をたたいて)深いところではヴードゥーを信じてるんだ。」
←ベナン:「蛇の寺院」と呼ばれるヴードゥーのお寺
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カリビアン・ヴードゥー/アフロアメリカン宗教
16Cからはじまった奴隷貿易の結果何千万人ものアフリカ人が南北アメリカやカリブ海諸島に連行された。カリブ海の島ハイチにつれてこられた奴隷たちの故郷の信仰とカトリックの聖人信仰などが混合して出来上がったのがブードー教である。ハイチにつれてこられた奴隷たちは現在のベナン・ナイジェリアあたりの出身者が多かったためベナンのヴォードゥン信仰が転訛した「ヴードゥー」の名称で呼ばれている。
同様にアフリカの信仰とキリスト教的要素(時には北中南米カリブの現地宗教)が混合してできた宗教は、アメリカ州全土(特にカリブ海地域)にみられ、キューバのサンテリア(ヨルバ起源)・レグラ=デ=パオ(バコンゴ起源)、ブラジルのカンドンブレ(ヨルバ起源)・マクンバ(コンゴ・アンゴラの宗教が起源)、ジャマイカのオベア(イボ起源)などがある。
ベナン:林の中にあるブードゥーのやしろ
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ベナン・ナイジェリアの工芸
ベナン、ナイジェリア南西部の木彫美術・工芸で最も知られているものはやはり宮廷美術の発達したダホメー王国・ヨルバ諸王国・イフェ関連かヴードゥー教関連のものであろう。同地域ではヨルバ、フォンなどが木彫文化の担い手として知られているが、彼らの作品は日本に紹介されることの多いスーダンタイプ(直線的、抽象的、堅牢)の木彫文化とも、コンゴタイプ(写実的、曲線的、ハート型の顔)のそれとも一線を画し、アーモンド型の目、比較的写実的な、曲線を多用した描写、白木のまま、または多色で彩色することが多い、などギニア湾沿岸諸民族の多くに共通するいわばギニアタイプともいうべき特徴を持つ。フォンやヨルバの彫刻はヴードゥー関連の物が多く、ヴードゥーの神像、儀式の際の祭具などが多くつくられている。中でもシードビーズで彩色したヨルバの彫刻(頭上面など)はよく知られている。
またナイジェリアはアフリカ史上最高の青銅彫刻の産地でもある。最古のヨルバ王国イフェで作られたブロンズ彫刻は写実性と完成度の高さにおいて、世界的に見ても最高の水準に達していると評価されている。そのイフェから失蝋法によるブロンズ彫刻の技が伝えられたベニン王国(エド人)の青銅器文化もまたアフリカ美術史上最高水準のものであり、ベニンのブロンズ彫刻の顔にはヨルバやフォンの木彫り像に見られるような、アーモンド型の目、大きな鼻、曲線を多用した描写など類似の特徴が見て取れる。
ベナンの工芸品としてもとっも有名なものに極彩色のアップリケがあるが、これももともとはダホメー王国の軍旗であったり、王国の歴史、故事を描く垂れ幕から発展したものであった。古い作品にはモチーフの一つ一つ意味が込められていてフォンの象徴論に従って見れば一枚のアップリケ布に一遍の物語を読み取ることも可能である。現在は花鳥風月などの華やかな絵柄のものが多く作られ、ベナンの特産品として広く知られている。またナイジェリアのヨルバ人のつくる藍染めはアフリカ一美しいと評価されている。
ベナンの工芸品を語る上で忘れてはいけないのがひょうたん細工である。アフリカではひょうたんの表面に様々な装飾を施すことが広くおこなわれているが、フォン、バリバなどの民族が作るひょうたん容器には、様々な寓意的なモチーフが繊細な線で彫り込まれ、アフリカで最も美しいひょうたん工芸の一つに数えられている(スーダンのひょうたんは幾何文様が多いがこちらは動植物などのモチーフが中心:個人的にはアフリカで一番だと思っている)。またひょうたん細工の伝統をいかしたモダンなひょうたん工芸も盛んである。
そのほかに伝統的なかご細工(バスケタリー)、布、金属工芸、アクセサリーなどが作られていて、今日ではバティックをはじめとする現代工芸品の製作も盛んである。
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〜ヴードゥー信仰の本場ベナン・ナイジェリアから
数々の工芸文化を紹介します〜
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