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〜藍とは〜
藍染めとは含藍植物から青の色素を抽出し化学反応を用いてその青を布・糸に定着させることである。
藍(インディゴ)は人類最古の染料の一つであり、遅くともエジプト古王国時代((紀元前2500年ごろ)にはすでに使用され始めていた。その深く美しい青色は世界各地で好まれ、18世紀半ば〜後半の化学染料開発以前は世界中で最も広く使用されていた染料であった。
藍染料は主に熱帯地方に分布する様々な植物の葉から作られる。主なものに藤藍系のもの、インド藍系、琉球藍系、蓼藍(たであい)系、大青(たいせい)系などがあげられる。
・藤藍系:ギニア湾沿岸部に生育するマメ科の潅木
・インド藍系:インド、インドネシア、台湾、中米、アフリカなどに生育するマメ科潅木
・琉球藍系:タイ、ミャンマー、台湾、沖縄、小笠原などに成育するキツネノマゴ科の潅木状多年草
・蓼藍系:日本、中国などに生育するタデ科草本
・大青系:ヨーロッパ、シベリア、モンゴル、モロッコなどに生育する
アブラナ科草本(淡い藍色:パステルの原料)
上のような植物の葉を用いて染色を行う。生葉染めを行う例もあるがほとんどの場合は製藍と呼ばれる作業を経て貯蔵や運搬可能な固体藍染料:藍玉や藍テン(青偏に定。単語の読みはランテン)を作る。これらの固体藍染料はそのままでは水に溶けないため灰汁や石灰などを用いたアルカリ性溶液で還元しさらに発酵させて染液を作る。この作業を建藍、または藍を建てると呼ぶ。
製藍法は大きく分けて二つ。
・すくも(くさかんむりに染)法:含藍植物の葉を発酵させ堆肥状にする。それをつき固めたものが藍玉。
・沈殿法:含藍植物の葉を水につけて抽出した色素を石灰を混ぜて沈殿させる。
泥状に沈殿した色素成分を泥藍、それを乾燥させた固体を藍テン(青偏に定)と呼ぶ。
建藍で作った染液に糸や布を浸して染色を行う。藍甕や桶から引き上げられた糸・布は最初は黄褐色をしているが空気に触れるとすぐに青に変色する。これは酸化のためであり、アルカリ還元で水溶性になった藍の色素成分が酸化することによって再び非水溶性となり、色が固着する。濃い青を得るには染液につける時間を長くしたり何度も染を繰り返したりする。
藍(インディゴ)は染色に際して媒染剤を必要としない。このように糸や布に化学処理を施す必要のない染料は直接染料とよばれる。染色に用いる天然染料は数多くあるが、直接染料に分類されるものはそれほど多くない(藍の他にはクルミ=黒、リトマスゴケ=紫など)。
対して糸、繊維、布等を染める際に媒染剤と呼ばれる物質(尿、明礬、錫、鉄など)で下処理をして染料の吸収、固着を高める必要があるものを間接染料と呼ぶ。 |
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〜アフリカの藍〜
アフリカ各地でも藍染めは行われているが特に西アフリカで広く行われている。アフリカ(西アフリカ)の藍染めはイスラム商人を介してサハラ以南に広がったとも言われ、インド藍系のものが多く使われているがギニア湾沿岸部では藤藍系のものも多く用いられている。国や地域、民族により用いる含藍植物や微妙な染色工程の違いがあるため、ひとくちに藍色といっても濃淡や色味など多様性に富んでいる。
アフリカの藍染めの中でも特に有名なものがカノ(ナイジェリア北部の都市)のハウサ人による藍染めとナイジェリア南部のヨルバ人の藍染め:アディレである。特にカノは西アフリカの藍染めの中心地として遠く地中海世界にまでその名を知られていた。サハラの遊牧民トゥアレグはハウサのつくる色の濃い藍染め布を好んで身に着けるため「サハラの青い民」の異名を持つ。
現在でも西アフリカのほとんどの国で藍染めが行われているが上記の二民族に加えマリのドゴンやサラコレ、カメルーンのバミレーケなどの藍染め布が特によく知られている。
西アフリカの模様付きの藍染め布はほとんどが織り上げた布を染めて模様を描くのに対し、ブルキナファソなどでは予め染めた糸を用いて織る縞模様・市松模様の布や絣(かすり)も多く作られている。
西アフリカの藍染めは主に伝統的な手織り布(西アフリカの細幅木綿布)であるが、最近では機械織りの工業生産布に伝統的な藍染めを施すことも増えてきている。
*写真:砧打ちの藍染めターバンを身に着けたトゥアレグ男性・ニジェール |
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〜染めの技法〜
・絞り染め
巻き絞め(括り)、縫い絞め、型挟みなどで防染する染色技法。アジア、アフリカでは古くから盛んに行われてきたがヨーロッパではほとんど例が見られない。通常布を何重かに折りたたんで絞りを施すので同じパターンが連続して現れることになる。
西アフリカ全域で盛んに行われ、なかでもヨルバのアディレ・オニコ(巻き絞め)、アディレ・アラベレ(縫い絞め)が有名。ブルキナファソでも多く作られている。これもまた有名なバミレーケの縫い絞め藍染め布:ンドップはカメルーン北部の町から布を取り寄せバミレーケの女性によって縫い締めが施されたのちにもとの町に送り返されハウサの藍染め職人によって染められるという非常に手間のかかるものである。
作例)
など
・糊防染
でんぷん糊などで模様を描き染めを施したあとにのりを落とす。ヨルバの糊防染藍染め布:アディレ・エレコはアフリカ染織工芸の中でも最高のもののひとつに数えられている。最近では蝋防染(ろうけつ染め)も行われている。
作例)
・絣(かすり)
織る前の糸を染色する際に、繊維で縛るなどして糸の一部に防染を施した糸で織った布。絣織り(かすりおり)とも。織り上げたときに防染を施した部分が文様となるように計算して防染を施す。アフリカではヨルバの藍染め絣、バウレの絣布、ブルキナファソのものなどがよく知られている。経糸に防染を施したものを経絣(たてかすり)、緯糸に防染を施したものを緯絣(よこかすり)といい、アフリカの絣織り(伝統的なもの)はすべて経絣(たてかすり)である。
作例)
・縞織り
ブルキナファソでは予め染めた経糸で織る藍と白の縞模様の、または異なる濃さに染めた経糸で織る濃淡の青縞の経織り(たており)布が多く作られている。また、予め緯糸を染めて太い横縞の細幅布(緯織り)を織り縞をずらせて縫い合わせて藍と生成りの市松模様の布を作ることもある(マリ)。
作例)*右二つは縞織り布にさらに絞り染めを施したもの
また、藍で染めた布(特に衣類)に刺繍を施すこともニジェール、ナイジェリアやカメルーンをはじめとする国々で多く行われている。
作例)
いずれにせよこれほど化学染料が普及した現在においてもアフリカではまだまだこれだけ多様な伝統的手法による藍染め布が多数作られていることは藍染めがアフリカの人々におおいに愛されているとともに彼らの伝統文化の中でも大きな役割を果たしていることを物語っているといえよう。
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アフリカの藍染め特集は2017年10月末日をもって終了しました
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