ニジェール北部アガデスの大モスク |
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〜ニジェールの歴史・民族・社会〜
西アフリカの内陸に位置する国ニジェール。アルジェリア、リビア、チャド、ナイジェリア、ベナン、ブルキナファソ、マリと国境を接し国土の大半をサハラが占める。比較的降水量の多い南部のサヘル地帯に人口が集中していて、首都ニアメは国土の南西部を流れる大河ニジェール沿いに位置している。国の北部にはサハラが広がり、アイール山地、ジャド台地などの砂漠性山岳地帯が広がっている。
現在は沙漠に覆われているニジェール北部もかつては水の流れる緑豊かな土地であった。緑のサハラと呼ばれている時代にはサハラの南限ははるか北のアルジェリア中部まで後退し、ニジェールやマリ、アルジェリアなどは温暖で湿潤、狩猟の対象となる動物が豊富にいる初期人類揺籃の地であった。サハラ各地に多く残されているサハラの岩面画の遺跡はニジェールでもアイール山地に残されていて、かつての緑のサハラの時代を思い起こさせる。
ローマ風の馬車が描かれた各地の岩面画から、サハラが乾燥化をはじめた3000年前ごろにはすでにサハラを縦断する交易路が確立されていたらしいことが伺える。この時代の交通手段は馬であったがサハラの乾燥化が進むに従い、また7Cに始まる北アフリカへのアラブ・イスラムの進出に伴いより乾燥に強い交通手段であるラクダがサハラに導入され、サハラ縦断交易が活発になり、アガデス、ビルマなどが交易の拠 アイール山地に残された岩面画。
点、中継地として発展した。
現在のニジェールの版図はフランスやイギリスの事情で勝手に線引きされたものであり、歴史上この地域を統一的に支配した王朝、勢力はない。ニジェールの古い歴史については判らないことが多いが、大雑把に言って北部の沙漠地帯はトゥアレグ、トゥブ、アラブなどの遊牧民の勢力圏、南部は13,4Cからハウサ諸国の領土、東部はカネム=ボルヌー帝国(9〜19C)の版図、西部はソンガイ帝国(14C末〜16C末)の支配下にあった。ハウサ諸国は19C初頭のウスマン=ダン=フォディオのジハードにより全域がソコト帝国の支配下に入っていたが19C末にフランス、イギリス両国がこの地域に侵入、両国の協定(当然ながら地元の意向は無視)により現在まで引き継がれているニジェール・ナイジェリアの国境(当時はフランス植民地とイギリス植民地の境界)が決定した。その後フランス軍は現地勢力(特に北部のトゥアレグ)の激しい抵抗にあいながらも1922年にニジェール全域を支配、フラ
ニジェール河の投網漁 ンス領西アフリカに組み入れた。
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ニジェールは1960年の独立後も相次ぐ政変、クーデター、北部遊牧民(トゥアレグ、トゥブ)の蜂起、旱魃、サハラの拡大などに見舞われ現在世界最貧国の一つである。主な住民はフルベ、南部のハウサ(全人口の半分以上を占める)、東部のソンガイ・ジェルマ、北部のトゥアレグ、西部のカヌリなどであり、国民の8割強がイスラム教徒である。
北部アルリットのウラン鉱以外これといった資源もなく、南のナイジェリア、北のアルジェリアといった資源大国(石油)と比較して「アルとナイとにはさまれた、ほんとに何も無い国ニジェール。」などとの陰口をたたかれもするが、アイール山地の岩面画、伝統的な遊牧生活を守り続けるトゥアレグ、ジャド台地の奇観、テネレ沙漠を渡る塩のキャラバン、伝統的な牛牧生活を守り続けるフルベの一派ウォダーベ(ボロロ)の祭礼、ベナンとの国境に位置するW国立公園(世界遺産)、首都ニアメの巨大市場、充実した展示を誇る国立博物館(テネレで発掘された大型肉食恐竜の全身骨格有り)など魅力的な観光資源があり、それらを目玉に観光業の充実を図っている。
個人的な感想を言えばニジェールは暑さにはうんざりするが、人情も穏やかで西アフリカの中でも一番好きな国の一つである。アイール山地にある温泉はアガデスからラクダで2日(片道)。サハラの雰囲気も味わえ、沙漠のど真ん中で温泉にも入れる。アフリカのいろんな国、場所を回ってきた中でも一番面白かった場所のひとつであり、温泉好きの日本人にとってはニジェールで一番興味深い場所かもしれない。 首都ニアメ近郊の町の金曜市
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〜ニジェールの文化・工芸〜
アフリカ美術の華といえばなんといっても仮面、彫像などの木彫文化であろうが、ニジェールには木彫文化はほとんど存在しない。ニジェールの主な民族であるハウサ、ジェルマ、フルベ、トゥアレグのうちフルベとトゥアレグは遊牧・牧畜民でありそもそも仮面文化を持たない。農耕民であるハウサ、ジェルマも歴史的に木彫文化とは無縁であった。
木彫文化はニジェールの地に育たなかったが、何も木彫だけがアフリカ工芸の全てではない。ニジェール南部を中心に居住するハウサは商業民族としても有名であるが、有能な職人としても知られていて、ハウサ都市で作られる藍染め布、皮革製品、装身具などはアフリカ各地にその名を知られ、特に革細工はモロッコ革の名で遠くヨーロッパにまで名を知られていた。
他にも様々なビーズアクセサリー、原色を使った大胆な織り模様が美しいジェルマの布、フルベの装身具、市松模様が美しいフルベの木綿布、羊毛布、それぞれの民族の意匠を凝らしたひょうたん容器、などが知られているが、ニジェール工芸の華といえばやはりラクダ遊牧民トゥアレグの工芸品の数々であろう。
サハラの支配者として畏れられてきた一方で、トゥアレグは高度な工芸技術の持ち主としても知られてきた。銀製品をはじめとする金属工芸、女性の仕事である革製品などが広く知られているトゥアレグ工芸の代表である。特にトゥアレグクロスに代表されるトゥアレグのシルバーアクセサリー・ジュエリーはその洗練されたデザインと繊細な技巧で世界的に知られ
トゥアレグの銀細工師 ていて、エルメスがそのデザインを取り入れたことも
あるという。
現在では革細工、金属工芸の伝統をいかし現代的な小物(財布・かばん・食器・etc)の製作も盛んであり、様々な意匠を凝らした工芸品を見ることが出来る。
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〜サハラとアフリカが出会う国ニジェール.遊牧と農耕,ホワイトアフリカとブラックアフリカ。
それぞれの伝統を今に受け継いだニジェールの工芸品の数々をお楽しみ下さい〜
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ニジェール特集は2008年11月末日をもって終了しました。
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